花村元司

僕は歴史上にいる沢山の棋士の中でもこの人物が好きだ。

 

定跡を敢えて外し、難関な力将棋に無理やり持ち込んで幾度となく並み居るプロ棋士たちを相手に終盤で逆転勝ちを抑えてきた。大山康晴にこそ敵わなかったが、A級16期を保持し一般棋戦でも複数の勝利を挙げている。

 

元々この人物は真剣師といって、駆け将棋で生計を立てていた(勿論いいまでは違法)のだが、そのあまりの強さに連盟がプロ編入試験を‘‘初めて‘‘認め、初の編入者になったという異色の経歴を持つ。ちなみにこの後に編入試験が実施されたのは2005年の瀬川晶司以来60年以降になってからの話である。

 

但し、個人として最も注目したのはプロになる以前の方が羽振りが良かったと発言したことがあるという事である。

 

普通に考えれば賭け事で稼ぐよりも正社員として稼いだほうが安定した収入になるので後者のほうが生活はいい筈である。しかもプロ棋士と言えば年収が軒並み高い(A級でタイトル獲得ともなれば億を超える事だってふつうにあり得る)ものだが、この真相はどうだったのかは謎が多い。

 

少々汚い話をしてしまったが、同氏の破天荒とも言える棋風はこういった生活から生まれたのかと感じてしまった。